【洗浄とは?基礎編⑨】袋穴や密着部品に適した洗浄・乾燥方法とは?

 

袋穴・密着部品の洗浄 イメージ画像
目次


悩ましい袋穴や密着部品の洗浄・乾燥問題

部品の中でも、袋穴や密着は洗浄・乾燥不良が起こりやすい条件のひとつです。その主な原因は、部品が複雑な形状をしていることで、洗浄やすすぐための水が入り込みにくいことが挙げられます。 

「では、洗浄力が高く乾燥性にも優れたフッ素系溶剤や塩素系溶剤を使えば良いのでは?」と感じるかもしれません。しかし、洗浄剤が物理的部品の隙間に入り込まなければ洗浄剤の効果が十分に発揮されません。そのため、洗浄剤以外の工夫として、洗浄方法・乾燥方法の工夫が必要です。

 

2.洗浄の工夫4選

まず洗浄方法の工夫から紹介します。主な工夫は下記の4つです。

 

2-1.減圧をする

洗浄槽内を減圧すると、部品に入り込んでいる気体を除去できます。また、気圧差によって部品の内部に洗浄剤が入り込みやすくなるのもポイントのひとつです。さらに、減圧状態と大気開放状態を繰り返すと、より部品間での気体の除去と洗浄剤の侵入を促進できます

 

2-2.回転式バスケットに入れて回転させる

部品を回転式バスケットに入れて回転させることも効果的な方法のひとつです。洗浄剤が、遠心力によって部品の隙間に入り込みやすくなります。また、回転の動作によって部品がバラけさせやすいため、薄い部品などが密着している場合にも効果的です。

ただし、高速で回転させてしまうと部品同士がぶつかったり擦れてしまったりすることで、“変形”や”打痕”といった部品不良を引き起こす可能性もあります。そのため、回転の適正なスピードを見つけることが大切です。

 

2-3.バスケット内で揺らす

“回転”と同様に、“揺らす”ことも効果的です。部品に動きを与えることで部品同士に隙間が生じやすく、洗浄剤が侵入しやすくなります。また袋穴等に入り込んだ洗浄剤の液切りも行う事が出来ます。この洗浄方法を「揺動洗浄」または「振動洗浄」と呼びます。 

 

2-4.シャワー洗浄×超音波洗浄

シャワー洗浄と超音波洗浄を組み合わせることも、袋穴や密着部品の洗浄で有効です。シャワー洗浄により、高圧で洗浄剤・水が部品に射出されることで、部品の隙間に洗浄剤や水が入り込みやすくなります。また、超音波洗浄では、科学と物理の2つの作用(※)によって細部まで洗浄剤を行き渡らせることが可能です。

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※参考:洗浄の強いミカタ、超音波洗浄の仕組み 

 

3.乾燥の工夫4選

洗浄と同様に、乾燥方法にも工夫することで乾燥不良を避けられます。主な工夫は下記の4つです。

 

3-1.真空引きベーパー乾燥

部品を入れたバスケットを真空にして乾燥させる真空引き乾燥は、袋穴や密着部品の乾燥に有効です。真空にすることで、気体が除去されます。これにより、袋穴のような非貫通穴の内部に侵入した気体取り除くことが可能です

真空に加えて、ベーパー(蒸気)で部品の温度を上げて乾燥性を向上させる方法を併用する事が主流となっています。

※参考:重要な乾燥プロセス代表、真空乾燥の効果

 

3-2.バレル回転温風乾燥

洗浄と同様に、乾燥においても回転は有効です。遠心力によって穴の内部に潜んでいた液を排出できるほか、回転によって部品の密着状態が解除されます。また、さらに温風を吹きかけることで乾燥がより促進されるのもポイントのひとつです。

 

3-3.吸引乾燥

穴の内部や細部は液体が残りやすいことから、吸引式の乾燥も有効です。非貫通穴の内部や細かな凹凸が多数存在するものは、特に自然乾燥が難しい部類。だからこそ、温風を当てて表面を乾燥させながら水を吸い出す吸引乾燥が有効なのです。

 

3-4.溶剤水切り乾燥

水溶性加工液が付着した部品をそのまま蒸発乾燥させると水ジミが発生します。その場合は特殊な界面活性剤を添加した洗浄剤で前洗いを行い、部品に付着した水分を強制的に分離させる方法が、溶剤水切り乾燥です。ベーパー洗浄・乾燥と組み合わせることで、水ジミを防ぎ乾燥する事が出来ます。

 

まとめ

一般的な形状と異なる部品などの場合、洗浄・乾燥方法に工夫をこらすことで洗浄・乾燥不良を防ぐことが出来ます。どのような仕上がりを想定しているのか、その用途に合わせて適切な方法を選択すると良いでしょう。

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