脱脂洗浄とは|方法・洗浄剤・設備の選び方と評価方法まで完全解説
概要
金属加工や精密部品の製造現場では、切削油・プレス油・防錆油などの油分が部品に付着し、次工程のめっき・コーティング・接着などで不良の原因となります。これを取り除くのが「脱脂洗浄」です。
本記事では、脱脂洗浄の基本概念から、物理的・化学的な脱脂方法、洗浄剤の3系統(炭化水素系・水系・フッ素系)の選び方、洗浄設備の選定基準、6種類の評価方法、そして環境規制への対応までを、洗浄プロセス30年以上の知見をもとに解説します。
1. 脱脂洗浄とは|定義と必要性
2. 脱脂洗浄が必要な業界と用途
3. 脱脂方法の種類|物理的脱脂・化学的脱脂
4. 脱脂洗浄剤の3系統と選び方
5. 脱脂洗浄設備の選定ポイント
6. 脱脂洗浄の評価方法6選
7. 環境規制とPFAS問題|脱脂洗浄のこれから
8. JFE商事エレクトロニクスの脱脂洗浄ソリューション
1. 脱脂洗浄とは|定義と必要性
油分が残ったままだと、表面処理がうまく定着せず、剥離・腐食・接着不良などの原因になります。部品の形状や付着汚れの種類によって適合する洗浄剤や洗浄方法が異なるため、適切な脱脂洗浄方法を選ぶことが重要です。
2. 脱脂洗浄が必要な業界と用途
脱脂洗浄は、製造業の幅広い業界で実施されています。代表的な業界と用途は以下のとおりです。
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業界 |
主な用途 |
典型的な汚れ |
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自動車部品 |
プレス・切削後の脱脂、塗装・溶接前処理 |
プレス油、切削油、防錆油 |
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精密機械部品 |
組立前の表面清浄化 |
加工油、潤滑油、研磨粉 |
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電子部品・半導体 |
コーティング前、めっき前処理 |
加工油、フラックス、微粒子汚染 |
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医療機器部品 |
組立前・滅菌前処理 |
加工油、樹脂残渣、人為汚染 |
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金型 |
射出成形後のメンテナンス |
ガス焼け、離型剤、樹脂残渣 |
業界ごとに要求される清浄度や、扱える洗浄剤の種類(食品衛生法、医療機器GMP等の規制)が異なるため、業界の特性を踏まえた洗浄プロセスの設計が求められます。
3. 脱脂方法の種類|物理的脱脂・化学的脱脂
3-1. 金属は加工中に油が付着する
金属は加工中に様々な油が使用されています。例えば加工機械の潤滑油や金属品に塗布されている加工油・防錆油など、様々な原因や目的で金属加工物には油が付着しています。
3-2. 洗浄目的は主に脱脂
これらの油分は次工程にコーティング剤の塗布やめっきなどのプロセスがある場合に金属表面の油分がこれらを弾いてしまい、不良の原因となります。このため金属加工において油分の洗浄は必要不可欠です。この油分を洗浄するプロセスのことの「脱脂」または「脱脂処理」 といいます。
3-3. 物理的脱脂と化学的脱脂
脱脂には大きく分けて二つの方法があります。一つ目が物理的脱脂方法です。具体的には布による拭き取り法、高温の焼成炉で数時間加熱することで油分を酸化燃焼させる空焼き法、高圧スプレーによる吹き付け洗浄などがあります。
二つ目の方法として化学的脱脂法があります。以前は洗浄力が高い塩素系溶剤やフロン系溶剤が用いられていましたが、人への有害性や環境負荷が課題となり使用が制限されています。塩素系の代表であるトリクロロエチレンは強力な脱脂効果を持つ反面、有機溶剤としての毒性が問題視され、現在は労働安全衛生法・PRTR法等で規制されています。これらの理由から現在は、炭化水素洗浄液や、アルカリ洗浄液等の環境負荷の少ない洗浄剤へ切り替わっています。
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4. 脱脂洗浄剤の3系統と選び方
化学的脱脂で使用される脱脂洗浄剤は、大きく3系統に分類されます。それぞれメリット・デメリットがあり、油種・素材・コスト・規制対応によって最適な選択肢が変わります。
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洗浄剤系統 |
代表的な汚れ |
メリット |
デメリット |
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炭化水素系 |
プレス油・切削油・防錆油などの油性汚れ |
脱脂力が高い/引火点を上げた製品あり/蒸留再生可能 |
引火性/設備に密閉化が必要 |
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水系(アルカリ・中性) |
水溶性加工油、微粒子汚染 |
不燃/低コスト/処理が容易 |
乾燥に時間とエネルギー/廃水処理が必要 |
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フッ素系(代替フロン) |
精密部品の油性・微量汚染 |
不燃/乾燥が速い/微細部品に強い |
コスト高/PFAS規制動向に注意 |
洗浄剤の選定では、対象部品の素材(アルミ・ステンレス・樹脂など)との相溶性、KB値・アニリン点といった洗浄力指標、そして引火点・毒性・規制対応を総合的に判断する必要があります。
5. 脱脂洗浄設備の選定ポイント
脱脂洗浄を効果的に行うためには、洗浄剤だけでなく洗浄装置・乾燥装置の選定も重要です。代表的な脱脂洗浄機・洗浄装置のタイプと用途は以下のとおりです。
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設備の種類 |
特徴 |
適した用途 |
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真空洗浄機(炭化水素系・フッ素系) |
減圧下で洗浄・蒸留再生・乾燥を一貫実施 |
袋穴・密着部品の精密洗浄 |
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超音波洗浄装置 |
キャビテーション効果で物理的に汚れを剥離 |
微細な隙間・複雑形状部品 |
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水系シャワー洗浄機 |
水溶性加工液の脱脂・コンタミ除去に効果的 |
大量生産ラインの量産部品 |
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電解金型洗浄機 |
電解作用で金型のガス焼け・錆を除去 |
射出成形金型の保守 |
特に袋穴・密着部品・微細な内部構造を持つ部品は、単なる浸漬洗浄では油分が残りやすく、真空洗浄や超音波洗浄、減圧乾燥などのプロセスが効果を発揮します。
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6. 脱脂洗浄の評価方法6選
6-1. 油分残渣テストを行う理由
製造現場では加工品の品質を管理するために脱脂後の洗浄度を確認する必要があります。確認が不足していれば、製品の油分残渣を捉えきれず次工程の不良につながる上に、工程改善に時間を要する可能性もあります。
そこで次項より製造現場で利用しやすい簡単な確認方法から、より詳細で定量的な評価方法まで、実際に製造現場で使われている油分残渣テストを6種類紹介いたします。
6-2. 簡易的濡れ性確認(墨汁)
脱脂洗浄度確認として簡易的に行われている方法です。脱脂洗浄後の乾燥させたサンプルに対して墨汁を塗布もしくは浸漬させ、サンプル表面の墨汁のはじき具合を確認する方法。脱脂がしっかりと行われている場合はサンプル表面に均一に墨汁で濡れるのに対し、不十分である場合は油分が残っている箇所が墨汁を弾くという現象が起きます。
6-3. 試薬を使った塗れ性確認(ダインペン)
墨汁よりも少し定量的に塗れ性の確認をする方法としてダインペンがあります。ダインペンとは塗れ性をチェックしたり、表面張力(ダイン値)を簡易的に評価するための製品です。ダインペンは表面張力別の複数本を使用します。評価方法はあるダイン値のダインペンをサンプルに塗り、2秒間放置し弾き具合で評価します。例えばダイン値40 mN/mのダインペンを使用した場合、放置後にサンプルがダインペンのインクを弾けば、そのサンプルのダイン値は40 mN/m以下であることがわかります。そこからダイン値を38、36… mN/mと下げていき、インクを弾かなくなった値がそのサンプルのダイン値であると特定することができます。
6-4. 目視・ブラックライト法
製造現場で簡易的に油分残渣を確認する方法として、サンプルにブラックライトを当て目視検査する方法があります。金属加工に使用される油分には蛍光物質が含まれていることが多く、ブラックライトを照射するとサンプルの残渣の油分が発光し、可視化することができます。
6-5. セロハンテープ粘着試験
ブラックライトと同じく、簡易評価として粘着評価があります。脱脂後のサンプルに対してセロハンテープなどのテープを貼り付け、一定の圧力をかけ剥離試験を行います。脱脂が十分できていれば剥離ができず、脱脂が不十分であれば剥離されるという評価方法です。評価の際は使用するテープの種類や剥離条件などを検討する必要があります。
6-6. 接触角測定
塗れ性をより定量的に測定する方法として接触角計を用いて、「接触角」を測定する方法があります。サンプル表面に水滴を一滴落とし、水滴の形状を測定することで「接触角」を測定する方法です。液体はサンプルの表面に滴下されると液体のもつ表面張力で丸くなります。丸くなった水滴の接線とサンプル表面の成す角を「接触角」と言います。この接触角が小さい場合は塗れ性が良く十分に脱脂ができていると言え、逆に接触角が大きい場合は塗れ性が悪く脱脂が不十分と言えます。
またこの「接触角」がわかることで「表面エネルギー」を測定することができます。それは既知の表面エネルギーをもつ水滴をサンプル表面に滴下し、さらにYoungの式を用いることでサンプルの表面エネルギーを算出することもできます。言い換えれば脱脂の洗浄度を表面エネルギーとして測定することも可能です。

6-7. 赤外分光による残渣分析
赤外分光光度測定を用いてサンプル表面の油分を定量的に測定する方法もあります。評価原理としては抽出した油分の吸光度を測定し、あらかじめ評価した検量線を用いて油分量を算出する方法です。
赤外分光光度測定で測定できる吸光度はLambert- Beer 則で表すことができます。Lambert- Beer 則は以下のような式で表すことができるため、残渣となる油分の濃度と吸光度は比例関係にあると言えます。つまり、既知濃度の油分を含んだ液の吸光度を数点測定すれば検量線を作成することができます。サンプル表面の油分を抽出し吸光度を測定し、この検量線と照らし合わせることで定量的なサンプル表面の油分残渣量を算出することができます。

7. 環境規制とPFAS問題
脱脂洗浄業界は、環境規制の動向を常にウォッチする必要があります。過去にはオゾン層破壊物質である特定フロン(CFC、HCFC)が使用禁止となり、現在はPFAS(有機フッ素化合物)の規制動向が世界的に注目されています。
特にAK-225(HCFC-225)は2020年に生産が終了しており、代替フロンへの切替が進んでいます。また塩素系溶剤(トリクロロエチレン等)も労働安全衛生法における特定化学物質第2類に分類され、使用に厳格な管理が求められます。
環境負荷を抑えながら高い洗浄性能を維持するため、近年では引火点を上げた炭化水素系洗浄剤や、次世代型フッ素系洗浄剤(HFO系)への移行が進んでいます。
8. JFEの脱脂洗浄ソリューション
JFE商事エレクトロニクスは、洗浄プロセス30年以上の実績をもち、約500社のお取引、1,000台以上の洗浄機納入実績を有しています。脱脂洗浄に関わる「洗浄剤・洗浄装置・保守サービス」をワンストップで提供できる点が強みです。
また、タイ・上海・マレーシア・シンガポール・ベトナム・インドネシア・フィリピンの7拠点に洗浄液を在庫し、お客様のグローバル製造拠点でも安定供給を実現しています。海外拠点でも経験10年以上の洗浄機技術エンジニアが現地でメンテナンスに対応します。
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