特集記事②【どうなる?産業用洗浄機の未来】国内トップシェアメーカー社長にインタビュー【後編】

炭化水素系洗浄機『CLEANVY』『CLOVA』や次世代フッ素系洗浄機『FISTA』『FLOVA』の産みの親であり、産業洗浄分野で深い知見を有している洗浄機器専門メーカー 株式会社クリンビーの岡村 和彦社長に、これまでと、これからの産業用洗浄機についてお話を伺いました。

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後編では、主に海外の状況を含めた産業用洗浄機のこれからについて語っていただきました。ぜひ前編と併せて覧ください。

※本記事は前編・後編のうち、【後編】となります。

 >>【前編】はこちら。

■岡村 和彦社長 プロフィール

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“フロン全廃の年”でもある1995年に株式会社クリンビーを設立。「地球環境を守る」という志を掲げ製品開発に取り組み、炭化水素系洗浄機において国内トップメーカーに。積極的に海外展開も図り、炭化水素系洗浄機の第一人者として世界を舞台に活躍している。

 


目次

真空洗浄により”炭化水素系”が主流に【第1次洗浄革命】

フッ素系×溶剤ロス”ほぼ0”がもたらす未来【第2次洗浄革命】

世界的な産業洗浄のトレンドはいずれ日本にもやってくる

まとめ

 

■ 真空洗浄により“炭化水素系”が主流に 第1次洗浄革命】

―――革新的なアイデアである真空を使った炭化水素系洗浄機。開発された当時、やはり当初から相当数の注文があったのではないですか。

岡村社長:いえ、そんなことはありません。今でこそ、月に数十件とお問い合わせをいただいておりますが、開発したばかりの当時はそれほど注目されていたわけではないんです。

なぜなら当時、炭化水素系溶剤は代替フロンのひとつでありましたが、火災の危険性から”安全上の問題を抱えている”ということが一般的な共通認識としてありました。そのため、炭化水素系溶剤を使用すること自体が避けられていたんですね。しかし私が真空を使った炭化水素系洗浄機を開発したことによって、5年くらい時間をかけて「もう危険なものではない」という認識に変わっていきました。

実際に今では、”炭化水素系洗浄機”といえば”密閉式の真空洗浄機”が当たり前となっています。この真空洗浄機の開発によって、炭化水素系溶剤が産業洗浄における主流となったことはまさに”第1次洗浄革命”だと言えるでしょう。

 ■ フッ素系×溶剤ロス”ほぼ0”がもたらす未来【第2次洗浄革命】

――”第1次”ということは、”第2次”もあるということでしょうか。

岡村社長:そうですね、実は”第2次洗浄革命”もすでに動き出しています。その鍵となるのは、昨年開発した次世代型フッ素系洗浄機『FLOVA(フローバ)』の存在です。

ここまでの、お話の中では”脱フロン”が提唱されたばかりの話題として脱フロンには、水系、炭化水素系、そして従来フロンに代わる新しいフロンという3つの選択肢があることをお話してきました。(>>【前編】参照)。

そんな中、近年になってようやく新しいフロン(HFO)が開発されたんです※。そしてこの新しい次世代フロンを溶剤として使用したフッ素系洗浄機であり、さらに密閉式という特徴をもつのが『FLOVA』です。

※代替フロンと新しい(次世代)フロンについて

モントリオール議定書で規制対象となった特定フロン(CFC,HCFC)に代わり、代替フロン(HFC)も開発された。代替フロンは特定フロンに代わって主流となったが、後にオゾン層は破壊しないものの、高い温室効果を持つことが判明。近年は2050年のカーボンニュートラル(脱炭素化)を目指して、代替フロンからさらに新しいフロン(HFO)への転換に注目が集まっている。

参考:代替フロンに関する状況と原稿の取組について

(環境省、経済産業省 資料より)

 

――炭化水素系溶剤を使用する密閉式の真空洗浄機が開発されたことで、炭化水素系溶剤が従来フロンに代わる主流となっていったことが“第1次洗浄革命”だと先ほどおうかがいしました。“第2次洗浄革命”は、『FLOVA』によって同じような流れが次世代フッ素系溶剤で起こりうるということでしょうか?

岡村社長:はい、そうなっていくのではないかと考えています。まず、現状からお話ししていきますね。

 かつて“脱フロン”の流れから“炭化水素系溶剤”に注目が集まったのと同じように、現代社会においては“EV(電気自動車)の開発・脱炭素(カーボンニュートラル)”の流れから“次世代フッ素系溶剤”に注目が集まりつつあります。なぜ注目されているかといえば、次世代フッ素系溶剤は洗浄力の高さはもちろん、従来フロンに比べて環境への負荷が低いことがメリットとして挙げられるからなのですね。

―――時代的なニーズにマッチした、理想的な洗浄剤ということですね。

岡村社長:しかし課題のひとつとしては、他の洗浄方法よりも溶剤が高価な点が挙げられます。密閉式ではない洗浄機の場合、洗浄工程で洗浄槽を開け閉めすることから、大気中に溶剤が蒸発していってしまうこと(溶剤ロス)は避けられません。そして溶剤のメーカー側でも価格的な努力はしてくれていますが、素材の原価を抑えることにも限界があります。

すると、かつての炭化水素系溶剤も同じような課題があったように、「環境へ配慮して次世代フッ素系溶剤は使いたいけれども、総合的なコストを考えるとなかなか導入に踏み切れない」というお客様も出てきてしまいますよね。

そこで“コストを抑える”という課題を解決するために開発したのが、密閉式の次世代フッ素系洗浄機FLOVAです。『FLOVA』は密閉式だからこそ、大気中への溶剤の蒸発をごくわずかに減らすことができます。これにより、次世代フッ素系溶剤における総合的なコストを抑えることにもつながり、フッ素系溶剤の導入も検討しやすくなっていくことが予想されます。

FLOVA』の存在によって、今後“フッ素系洗浄機”といえば“密閉式の真空洗浄機”という概念が浸透する。そして現代社会のニーズはクリアしているものの、課題を抱えている次世代フッ素系溶剤に対する見方が変わり、今後徐々に広がっていく。これが、“第2次洗浄革命”として起こるのではないかと考えているわけです。

■ 世界的なトレンドはいずれ日本にもやってくる

―――ということは「FLOVA」も、ニュースタンダードとして時間をかけて徐々に私達の社会に浸透していくものだと考えているわけですね。

岡村社長:そうです。現時点ではまだ炭化水素系洗浄機に代わって次世代フッ素系洗浄機が産業用洗浄機の主流になるとはいえないでしょう。しかし、これから世界的に受け入れられる可能性があると見ています。

たとえば中国では、化学品工場の爆発などが度々問題視されているように、危険物に関する規制が日本よりも厳しい側面があります。そのため、炭化水素系が急拡大していくとは考えにくいでしょう。また水系は、現状として中国で多い洗浄方法ですが、工業用排水が工場近くにある河川へ違法廃棄されることも起きてしまうなど課題があります。

また、欧州では日本よりも環境問題への注目度が高いため、環境負荷が懸念される溶剤を大気中に放出してしまう可能性がある“密閉式ではない洗浄機”はNGとされているんですよ。

このような世界的状況があるからこそ、実際に海外では『FLOVA』試験的な導入がされたのち、結果に満足していただけたことで本格的な導入につながったケースもあります。

―――なるほど。フッ素系溶剤のコスト面でのメリット以外に、脱炭素の流れも含めてこれからの世界的な洗浄のトレンドとなっていくであろう要素を「FLOVA」は持っているということですね。興味はあるけれども、まだフッ素系洗浄機の導入に踏み切れていないお客様にとってはうれしい製品ですね。

岡村社長:産業洗浄と環境問題は切り離せないものだといえます。だからこそ、産業洗浄の分野において“環境負荷をどうやって減らすか”というトレンドは、これから日本でもさらに加速していくでしょう。

 そして世界的なトレンドの条件を満たしている次世代フッ素系溶剤、その課題をクリアできる密閉式の次世代フッ素系洗浄機『FLOVA』の存在、これらが一般に受け入れられていく“第二次洗浄革命”が実現するのもそう遠い未来でもないと予想しています。ぜひ、産業洗浄の業界全体における良い変化につながっていってほしいですね

 またこれまでクリンビーは、主に “炭化水素系の洗浄機メーカー”という見方をされてきました。しかし、密閉式の次世代フッ素系洗浄機『FLOVA』をきっかけとして、水系もフッ素系も取り扱う“総合洗浄機メーカー”として認識いただけるように努力をしていきたいと考えています。

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