【フッ素系洗浄剤の現在と未来】 『AMOLEA(アモレア)® AS-300』は何をもたらすのか【後編】
“Your Dreams, Our Challenge”をブランドステートメントに掲げ、モビリティや建築・社会インフラ、環境・エネルギー、農業・医療、生活関連など、あらゆるシーンの化学製品を手がけるAGC株式会社。フッ素化学品事業においては、次世代型フッ素系洗浄剤『AMOLEA(アモレア)AS-300』ほか、多くのフッ素製品を展開しています。
本インタビューではそんなAGC社で25年にわたってフッ素系洗浄剤に関わり続けている花田氏に、次世代型フッ素系洗浄剤『AMOLEA』の特長をお伺いしました。
【前編】では、JFE商事エレクトロニクスがAGC社の『AMOLEA』の取り扱いに至った経緯を。続く【中編】では、AGC社ではどのようにフッ素系洗浄剤の開発を続けてきたのかについてお伺いした内容を収録しています。ぜひ、【前編】【中編】も併せてご覧ください。
※本記事は全3編(前編・中編・後編)のうち、【後編】です。
・環境性能だけじゃない、“洗浄能力の向上”も実現
・洗浄装置との組み合わせで“コスト削減”も可能
・『AMOLEA』が導くカーボンニュートラルの未来
・まとめ
“地球温暖化係数の極小化”に成功した『AMOLEA』
―――前回のお話をまとめると、環境との共生を課題に長年進化を続けてきたフッ素系洗浄剤。『AMOLEA』はその進化を受け継ぐ形で、従来製品の抱えていた環境への影響を極小化することに成功した洗浄剤という認識でよろしいでしょうか?
花田さま>
そうです。地球温暖化の要因である温室効果ガスですが、化石燃料を燃やして発生する二酸化炭素(CO2)の比重が圧倒的に多くの割合を占めています。
実はフロン類が、地球温暖化に占める割合は非常に少ないんです。それでも、AGCはもちろん、世界中の化学品メーカー各社が新しいフッ素系洗浄剤の開発に取り組んできました。
そうした流れの中でAGCは、オゾン破壊係数ゼロに加え、従来のフッ素系洗浄剤で課題となっていた地球温暖化係数の極小化にも成功。“地球のため”と“私たちの生活の発展”の両方を叶える持続可能な環境の実現を目指して『AMOLEA』を開発したのです。
※地球温暖化のメカニズム
現在、地球の平均気温は14℃前後ですが、もし大気中に水蒸気、二酸化炭素、メタンなどの温室効果ガスがなければ、マイナス19℃くらいになります。太陽から地球に降り注ぐ光は、地球の大気を素通りして地面を暖め、その地表から放射される熱を温室効果ガスが吸収し大気を暖めているからです。
近年、産業活動が活発になり、二酸化炭素、メタン、さらにはフロン類などの温室効果ガスが大量に排出されて大気中の濃度が高まり熱の吸収が増えた結果、気温が上昇し始めています。これが地球温暖化です。
出典:全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)
環境性能だけじゃない、“洗浄能力の向上”も実現
―――環境への影響を限りなく小さくすることで、地球と私たちの生活の発展という両方にメリットをもたらすことを目的に開発されたのが『AMOLEA』なのですね。油脂洗浄力については、HCFC類と同等と考えても良いのでしょうか?
花田さま>
はい。環境性能はもちろん、従来のフッ素系洗浄剤が持つ“不燃性”と“速乾性”という特長はそのままに、油脂洗浄力はHFC類やHFE類を上回る性能を実現したのが『AMOLEA』です。
水系洗浄剤は“燃えないこと”がメリットのひとつにあるものの、課題として“乾きにくさ”が、炭化水素系洗浄は、“汚れの落としやすさ”がメリットの一方で、“引火性”と“乾きにくさ”が課題となっていました。
この水系洗浄と炭化水素系洗浄のいいとこ取りをして、汚れの落としやすさを保持したまま、“不燃性”と“速乾性”を持つ洗浄剤がフッ素系洗浄剤です。
しかし、フッ素系洗浄剤の中で、HFC類やHFE類は油脂洗浄力よりも環境への配慮を優先して開発されました。そのため、AGCのHFC類/HFE類においても、油脂洗浄力については当時の『アサヒクリン AK-225』の代替とはなり得なかったのです。
その点で『AMOLEA』は、『アサヒクリン AK-225』と同等の油脂洗浄力を持つことでHFC類/HFE類従来製品の課題を解消し、環境への配慮と高い油脂洗浄力を兼ね揃えることに成功したフッ素系洗浄剤です。
洗浄装置との組み合わせで“コスト削減”も可能
―――環境への配慮は最も重要なことではあるものの、肝心の洗浄力が低ければ洗浄剤としては使いづらさにつながってしまう…。そんな機能面も意識して開発されたのが『AMOLEA』なのですね。
しかし、実際の利用を考えた際に、1点気になった部分があります。フッ素系洗浄剤は他の洗浄剤に比べて”価格の高さがデメリットだと思いますが、この点はどうでしょうか?
花田さま>
そうですね。確かに、フッ素系洗浄剤の単価は他の洗浄剤に比べて安いとはいえません。
しかし『AMOLEA』は他の洗浄剤よりもリサイクル性に優れています。
フッ素系洗浄剤としての合理化と、省エネルギー化も叶えたのが『AMOLEA』なのです。
<『AMOLEA』と他洗浄剤との特性比較(※「前編」より)>
|
油脂洗浄力 |
乾燥時間 |
不燃性 |
金属の腐食 |
リサイクル |
省スペース |
省エネ |
炭化水素系 |
◎ |
△ |
× |
◎ |
○ |
○ |
△ |
水系 |
△ |
× |
○ |
× |
× |
× |
× |
AMOLEA AS-300 |
○ |
◎ |
〇 |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
―――他洗浄剤に比べて、フッ素系洗浄剤は洗浄剤の使用量自体を抑えられるのですね。
花田さま>
はい。さらに、蒸散ロスの少ない洗浄装置から漏出したガスの回収装置と組み合わせると、洗浄剤の消費量を減らせるため、単価が高くても溶剤購入にかかるトータルコストを削減できます。
”ソフト”の洗浄剤と“ハード”の洗浄装置を組み合わせることで、その効果が最大限に発揮されます。これは車の燃費で考えてみるとご理解いただきやすいかもしれません。
車でいえば、ソフトはガソリン、ハードはエンジンです。“燃費を良くしたい!”と考えた際に、ガソリンの機能性だけをいくら向上させても、エンジンが改良されなければ車の性能は上がりません。逆も然りです。
洗浄装置と組み合わせることで、『AMOLEA』の性能が十二分に発揮されるのです。
『AMOLEA』が導くカーボンニュートラルの未来
―――確かに、洗浄剤と洗浄装置はどちらか一方だけでは成立しませんね。それぞれがお互いの良さを引き出し合うことで効果が最大化される。それが、『AMOLEA』では、複数の装置と組み合わせられることで引き起こされるわけですね。
花田さま>
そうです。洗浄剤の消費量を減らすことは、環境負荷低減につながります。
さらに、『AMOLEA』は乾燥性にも優れているため、乾燥工程自体の効率化にもつながり、電力消費量の削減にも貢献できます。
―――ということは、洗浄剤そのものの環境負荷だけに留まらず、工場全体での環境負荷軽減にもつながるということですね。
花田さま>
はい。効率化によって電力の消費量を抑えられれば、工場の稼働で排出される二酸化炭素の排出量の削減にもつながります。また、廃水・廃液を減らせることは、外部に洗浄剤が排出される量をより一層減らせるわけですから、環境負荷の低減にもつながります。
ここから『AMOLEA』は、いま世界各国が取り組んでいるカーボンニュートラルやSDGsの実現にもつながっていく製品だと考えています。
フッ素系洗浄剤は、これまでも長きにわたって環境に適応しながら進化を遂げてきました。その大きな流れの中で、私たちはより一層地球環境と向き合えるフッ素系洗浄剤として『AMOLEA』を開発することができました。
AGCではこれからも、地球環境と産業の発展が持続的な形で続けられるように取り組んでいきたいと考えています。
まとめ
―――産業の発展は、地球という私たちが生活できる環境があって初めて成り立つものです。そんな永遠のテーマ“環境との共生”を、どのように実現していけるのか。課題に対する絶対的な答えは見つからないまでも、お客様の課題に寄り添い、JFE商事エレクトロニクスとしてできる限りのサポートをしていきたいと考えています。
JFE商事エレクトロニクスでは、本インタビュー内で紹介をした洗浄剤・洗浄機について、ご不明点・疑問点にお答えさせていただきます。お寄せいただいたお悩みに沿ったソリューションのご提案をすることも可能です。よろしければ下記よりお問い合わせください。
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