いま、世界的な課題として注目される環境保全。それは産業洗浄の分野においても例外ではありません。実際に「従来方法に代わって環境に配慮した洗浄方法を教えて欲しい」といったお客様からの問い合わせが、JFE商事エレクトロニクスにも多く寄せられています。過去にクリンビー社の岡村社長におこなったインタビューでもあったように、産業洗浄が新たなステージへと移行しようとしているのかもしれません。
このような背景を受け、当社ではAGC株式会社によって開発された次世代型フッ素系洗浄剤『AMOLEA(アモレア) AS-300』の取り扱いをスタートしました。本章では、なぜ当社が『AMOLEA』の取り扱いをスタートしたのか、その理由をご紹介します。
※本記事は、【中編】【後編】へと続く【前編】となります。【中編】【後編】では、AGC社へのインタビューを通じてフッ素系洗浄剤の現状とそれに続く未来についてまとめられています。ぜひ併せてご覧ください。
2021年に開催された「気候変動サミット」を皮切りとして、2050年までに地球温暖化ガスの排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」の実現に向けた取り組みが、いま世界各国でおこなわれています。
JFEグループも、この気候変動に関わる問題を重要な経営課題に設定。カーボンニュートラルの実現に向けて、グループ全体で日々取り組んでいます。
そんな中JFE商事エレクトロニクスでは、クリンビー社による高い洗浄性と環境性を両立した密閉式フッ素系洗浄機『FLOVA』の取り扱いなどを通じて、産業洗浄の分野で環境問題と向き合ってきました。
カーボンニュートラルの実現は、実は産業洗浄が常に向き合ってきた課題でもあります。というのも、脱フロンの歴史が私たちの記憶に新しいように、工業製品の洗浄はまさに地球環境と向き合って進化を遂げてきた事実があるからです。
そして現代において、環境に優しい産業洗浄の選択肢としてはフッ素系洗浄剤を使用した洗浄方法がひとつの選択肢に挙げられます。実際に、当社としてもフッ素系洗浄剤が一般にどのように普及していくのかをかねてより注視していました。
なぜなら下記の表にあるように、『AMOLEA』フッ素系洗浄剤は高い油脂洗浄力はもちろん、リサイクルのしやすさといった環境性能、そして密閉式のような洗浄機等と組み合わせることで洗浄剤の消費量を大幅に抑制可能といった特性を持っているからです。
<『AMOLEA』と他洗浄剤との特性比較>
|
油脂洗浄力 |
乾燥時間 |
不燃性 |
金属の腐食 |
リサイクル |
省スペース |
省エネ |
炭化水素系 |
◎ |
△ |
× |
◎ |
○ |
○ |
△ |
水系 |
△ |
× |
○ |
× |
× |
× |
× |
AMOLEA AS-300 |
○ |
◎ |
〇 |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
続いては、どのようにして当社が『AMOLEA』に注目するに至ったのか、その経緯についてご紹介します。
前述したように、フッ素系洗浄剤は油脂洗浄力と環境性能を兼ね揃えています。かつては、脱フロンの歴史の中で誕生したAGC社のフッ素系洗浄剤『アサヒクリン AK-225(HCFC-225)』が工業製品の洗浄で広く使用されていました。
しかし『アサヒクリン AK-225』は、オゾン層破壊において課題を抱えていたため、販売当初から生産期限が決められていた洗浄剤でした。そのため、『アサヒクリン AK-225』が生産終了を迎えた後、当然ながら新たな環境対応力と洗浄性に優れた洗浄方法が求められるようになります。
当社にも「『アサヒクリン AK-225』に代わるフッ素系洗浄剤は何か」といった問い合わせが多く寄せられていました。
各所からご相談をいただいていた当時、『アサヒクリン AK-225』と同等以上の洗浄能力と環境性能を両立した洗浄剤はなかなか存在しませんでした。そのため、当社としてもお客様に合わせた代替案をその都度ご提案する形式をとっていました。
そんな中で、洗浄能力を担保しながらも、環境性能もクリアした製品としてAGC社から新たに誕生したのが『AMOLEA(アモレア) AS-300』です。
『AMOLEA』は、待望の次世代型フッ素系洗浄剤でした。そして、当社がかねてより取り扱いをしているクリンビー社の洗浄剤ロスを極限まで減らせる密閉式フッ素系洗浄機『FLOVA』と併せて活用することで、洗浄能力と環境性能をさらに高められる洗浄剤であることも感じられました。
こうした背景から、カーボンニュートラルなどをはじめとした環境性能と、お客様の求める高い洗浄能力を実現する点において、当社では『AMOLEA』の取り扱いを決定しました。
世界的なカーボンニュートラルの取り組みにも合致した環境性を持ち、優れた洗浄能力も持つ『AMOLEA』。この次世代型フッ素系洗浄剤は、どのようにして開発されたのか。続く【中編】では、
AGC社で長年フッ素系洗浄剤に関わり続けてきたスペシャリストへ、その開発秘話をインタビューしました。
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