洗浄と切り離せない地球環境の話②|地表にも配慮した洗浄システム

大気・水・土壌・騒音については、維持されることが望ましい基準(環境基準)が法律で定められています。そしてその一環として産業用洗浄剤は、使用後にそのまま排水として下水へ流すことはできません。本記事では、環境に配慮した洗浄システムに関する法律を3つ紹介します。

目次

 

1.大気汚染防止法

大気環境を保全することを目的に1968年に制定された大気汚染防止法。工場や事業場から排出・飛散する大気汚染物質について、物質の種類ごと、施設の種類・規模ごとに排出基準等が定められています。高度経済成長期の渦中で、社会問題化していた工場からの“ばい煙”(※1)の抑制をきっかけに制定されました。

大気汚染が引き起こす問題 イメージ画像※参照 環境省「大気汚染が引き起こす問題」より

非水系の洗浄剤は、大気中に排出・飛散した際に気体になる有機化合物のため、浮遊粒子状物質光化学オキシダントの生成原因となります。このことから、フッ素系洗浄剤の一部を除く非水系の洗浄剤はすべて揮発性有機化合物(VOC)として、排出や飛散を抑制するための措置が必要とされています 

たとえば洗浄施設におけるVOCに対しては、洗浄剤が空気に接する部分の面積(※2)が5㎡以上のものは、400ppmC(※3)以下に排出量を抑えることが定められています。 

工場及び事業場から排出される大気汚染物質に対する規制方式とその概要(一部抜粋)>

物質名

主な発生の形態等

規制の方式と概要

ばい煙

硫黄酸化物(SOx)

ボイラー、廃棄物焼却炉等における燃料や鉱石等の燃焼

1) 排出口の高さ(He)及び地域ごとに
定める定数Kの値に応じて規制値(量)を設定
許容排出量(N㎥/h)=K×10-3×He2      一般排出基準:K=3.0~17.5
特別排出基準:K=1.17~2.34

2) 季節による燃料使用基準
 燃料中の硫黄分を地域ごとに設定
硫黄含有率:0.5~1.2%以下

3) 総量規制
総量削減計画に基づき地域・工場ごとに
設定

有害物質

フッ素(F)、フッ化水素(HF)等

アルミニウム精錬用電解炉やガラス製造用溶融炉等における燃焼、化学的処理

施設ごとの排出基準
1.0~20mg/N㎥

 

 

揮発性有機化合物(VOC)

VOCを排出する次の施設化学製品製造・塗装・接着・印刷における乾燥施設、吹付塗装施設、洗浄施設、貯蔵タンク

施設ごとの排出基準
400~60,000ppmC

 

※1 ばい煙とは :物の燃焼等に伴って発生する、いおう酸化物、ばいじん(スス)、有害物質などのこと。
※2 洗浄槽の開口部面積など
※3 ppmC (炭素換算濃度)とは:「ppm」は容量濃度のことで、1ppmは容積比で100万分の1を示す。「ppmC」は、そのppcを炭素に当てはめた炭素換算の体積100万分率。

2.水質汚濁防止法

水質汚濁防止法は、工場や事業場から公共用水域に排出される水の排出規制などを通じて 、公共用水域の水質の汚濁の防止や生活環境の保全を目的fとした法律です。大気汚染防止法と同じく高度経済成長期の1970年に、水俣病を引き起こした有機水銀などによる深刻な水質汚濁問題を解決するために制定されました。 

地下浸透水に関しての排出基準や排出制限、特定施設の届け出、緊急時の措置など、​​公共用水域の範囲や特定事業場・特定施設、排水基準の設定などについて定められています。 

有害物質は28項目 。定められている排水の汚染状態基準は、水素イオン濃度(pH)、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)など複数項目にわたります。都道府県によって基準値が上乗せされる場合もあるため、必要に応じて確認することが重要です。

参考:水質汚濁防止法関係資料 

3.土壌汚染対策法

土壌汚染防止法は、土壌中の有害物質の基準や対策などが定められている法律です。土壌汚染についての社会的関心の高まりを受けて、2002年に制定されました。 

人に健康被害を及ぼす可能性がある物質として、鉛やヒ素など26の物質が特定有害物質として指定されています。 洗浄分野においては、塩素系洗浄剤をはじめとした11種類の揮発性有機化合物が第一種有害物質として指定されています。 土壌汚染対策の仕組み イメージ画像

※参照 環境省「パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」 p5

4.まとめ

汚れを落とすために使用される洗浄剤ですが、その汚れをそのまま排出してしまうと、地球環境はもちろん生態系に大きなダメージを与えてしまいます。私たちの生活は、地球環境があって成り立つのだからこそ、持続可能な発展のためにも環境に十分配慮することが重要です。

お気軽にお問い合わせください