皆さんは洗浄工程にどのようなイメージがありますか?
「なんとなく汚れていたら良くなさそう...」
「綺麗な方が品質が良さそう...」
というようなイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。
昔から自工程に入ってるし、なんとなく使ってるという方やおまじない的な意味合いで使ってるというような方もいらっしゃると思います。
これらのイメージは決して間違いではありませんが、洗浄の効果は決してそれだけありません。産業における洗浄とは、モノ自体の本来の機能を引き出したり、新たな機能を与えたりすることができるとても重要な工程です。
具体例では次の4つのような目的で使用されています。
・製品の機能や性能向上
・次工程に対する前処理/回路形成におけるレジスト等の剥離
・外観特性の向上
・信頼性の向上
以上のように洗浄は汚れを除去するだけではなく、現代の産業においてなくてはならない工程と言えるでしょう。
洗浄の基礎について、シリーズで紹介していきます。
一回目は汚れについてです。
洗浄工程とは製造中の製品の汚れを洗浄する工程ですが、汚れというものは単にモノに乗っかっていることはあまりありません。モノの表面と汚れが相互反応を働かせながら存在しています。
そんな汚れには一般的に3つの種類に分けることができます。
①粒子汚れ・・・空気中の粉塵などの、微粉体の汚れ
②有機汚れ・・・油分などの有機物からなる汚れ。産業洗浄では最も多い。
③無機汚れ・・・金属の酸化皮膜等の無機物による汚れ。表面と汚れの付着力が強い場合が多い。
これら3つの汚れは混ざり合った汚れになっていることも多いです。たとえば研磨剤の洗浄では有機汚れとしての溶剤の中に、粒子汚れであるフィラーが存在している複合汚れです。この汚れを洗浄する際は有機汚れを除去すれば、複合汚れが洗浄できます。このように、汚れの実態をよく見きわめることは洗浄においてはとても重要な観点です。
また、モノによって汚れ方は様々です。例えば身近なテレビでも浮遊ゴミ汚れや指紋、皮脂など様々な理由で汚れています。当然、ものづくりの製造工程においてはより複雑な汚れがあります。例えば半導体などの微細な配線を有するモノでは、一見汚れが無くても溝や穴の一部に汚れが残留している場合もあります。このため、汚れ方にはモノ毎に様々であるため、現物をよく観察する必要があります。
汚れが洗浄される現象は「溶解」と「剥離」の2種類があります。「溶解」は溶剤系洗浄剤や酸性洗浄剤による汚れ、錆などの除去のことを指します。汚れの対象を洗浄剤との溶解反応で除去する方法です。一方、「剥離」は界面活性剤が含有されている水系洗浄剤などで油汚れなどの除去のことを指します。界面活性剤の作用で油とモノの表面張力を強くすることで、油がモノから弾かれるようになり、最終的に剥離されることで汚れが除去されます。
洗浄のレベルにも3種類あります。「一般洗浄」「精密洗浄」「超精密洗浄」の3つです。
「一般洗浄」はおおよその汚れを除去すること。「精密洗浄」は汚れを完全に洗浄すること。ただし汚れとモノの界面が残っている状態。「超精密洗浄」は汚れが完全に洗浄されており、モノ自体の表面が現れている状態にすることを指します。
全ての工程で「超精密洗浄」にすることが良いと思われますが、生産コストはタクトにより工程に必要十分な洗浄レベルを選択することが重要です。また、洗浄物の表面に薄い汚れや酸化膜が存在しているほうが、表面が化学的に安定である場合もあります。このため、洗浄レベルを上げすぎると必要な汚れや酸化膜が除去され、かえって不良に繋がるリスクもあります。次工程や最終製品の影響等も視野に入れ、最適な洗浄レベルを選択する必要があります。
仮に汚れを落とす工程が不十分で合った場合、どういったことが起きるでしょうか。たとえば金属加工品の表面にコーティングをするプロセスを想像してみましょう。製造過程で使用した加工油が残留している金属表面に目的のコーティングを施工するとどういったことが起きるでしょうか。加工油の直上はコーティングができずに、部分ハゲや外観異常などが容易に想像できるでしょう。このように汚れを落とす工程というのは、ものづくりを行う工程では必要不可欠であるため、次工程に影響を与えないためにも慎重にプロセス設計を行う必要があります。
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洗浄工程は、汚れを単に除去するだけでなく、製品の機能や性能を向上させる重要な工程です。汚れとは粒子汚れ、有機汚れ、無機汚れの3種類に分けられ、洗浄のレベルは一般洗浄、精密洗浄、超精密洗浄の3つがあります。洗浄には溶解と剥離の2つの方法があり、最適な洗浄レベルを選択することが重要です。洗浄工程が不十分だと、次工程や最終製品に不良が生じる可能性があるため、慎重なプロセス設計が必要です。