金属脱脂プロセスには様々な洗浄剤が使用されています。近年は塩素系有機溶剤の代替として炭化水素洗浄剤が使用されることが多くなってきています。炭化水素系溶剤には大きく分けてノルマルパラフィン(以下:ノルパラ)とイソパラフィン(以下:イソパラ)があり、本記事ではそれぞれの分子構造の違いから使用上の特徴について紹介します。
金属加工品は製造プロセスにおいて加工油や離型剤が使用されており、金属表面には様々な油や汚れが付着しています。これらの油や汚れは次工程のコーティングやめっきなどの工程で不良の原因となるため、必ず洗浄工程が必要です。洗浄には目的に合った洗浄剤を使用する必要があります。
脱脂工程で利用される洗浄剤には、様々な種類がありますが、最もよく利用されている一般的な洗浄剤をご紹介いたします。
水系洗浄剤とは、水を溶媒とし、主成分が界面活性剤、無機・有機助剤を含んだ洗浄剤のことを指します。
水系洗浄剤はさらに「酸性洗浄剤」「中性洗浄剤」「アルカリ洗浄剤」に分けられます。「酸性洗浄剤」は主に無機酸および有機酸を含んだ洗浄剤を指します。酸は錆などの汚れに強い洗浄剤です。「アルカリ洗浄剤」は主に水酸化ナトリウムや重曹などを含むアルカリ性を示す洗浄剤を指します。「アルカリ洗浄剤」は中和反応やケン化反応による除去を行います。「中性洗浄剤」は中性、もしくは弱酸性や弱アルカリ性の液性であり、主成分が界面活性剤を含む洗浄液を指します。界面活性剤の働きで油分の除去を行います。
水系洗浄剤のデメリットとしては、排水処理が必要であり、大規模な設備が必要になることが、挙げられます。
塩素系有機溶剤洗浄とは炭素鎖に塩素が結合した有機物を主成分とした洗浄剤です。使用するメリットとして、油分溶解性が高く、蒸留再生ができることです。またさらに不燃性であることから蒸気洗浄を行うことができるため、短時間で一定の洗浄効果を期待できます。一方で毒性が高く、環境負荷が大きいために法的規制が厳しいことから炭化水素系洗浄剤に切り替わってきています。
金属脱脂に用いられる炭化水素溶剤の多くはノルマルパラフィン系もしくはイソパラフィン系の洗浄剤が用いられています。これらを使用するメリットは金属への腐食が少なく、毒性が低いため取り扱いがしやすいことが挙げられます。また、蒸留再生ができることからコスト面でもメリットがあるため、現在の脱脂プロセスでは、この炭化水素系溶剤が多く使用されています。次項でこのノルマルパラフィン系とイソパラフィン系の違いを説明します。
パラフィンとは炭素原子が20以上のアルカン(CnH2n+2)の総称である。原油の蒸留により生成される半透明もしくは白色の固体であり、水に溶けず化学的に安定な物質です。パラフィンには主にノルマルパラフィンとイソパラフィンの2種類あります。
ノルマルパラフィンとイソパラフィンの違いは分子構造の違いにあります。分子鎖が直線状であるパラフィンをノルマルパラフィンと呼び、分子鎖が枝分かれしているパラフィンをイソパラフィンと呼びます。
ノルマルパラフィンとイソパラフィンの大きな違いはコストです。イソパラフィンは若干の臭気はあるものの、洗浄液の性能(洗浄性、乾燥性、再生効率)はほぼ同等です。しかし、イソパラフィンは生産メーカーが多いことから、ノルマルパラフィンと比較して安価であるのが特徴です。
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